目からウロコのマネジメント術
チームマネジメントは誰でもできる理由
以前から
「管理職のためのコミュニケーション術」のような研修をした経験はありましたが、私には管理職や部下を持ったという経験がなく
「そんな私にマネジメントを研修で教えられるのだろうか・・・」と感じていました。
ところが!
長年ミドルマネジメントのコンサルティングや育成をされてきた、株式会社BHLインターナショナルの東谷社長とお話しをしたときにまさに目から鱗の言葉を聞いたのです。
マネジメントは実は誰でもできるんですよね、それはスキルですから
えー、でも私は管理職になったことも、部下を持ったこともないですし
いや、マネジメントをしたことはなくても、された経験がありますよね。マネジメントされた経験はマネジメントするときに、例えば「相手がどういう気持ちなのか」わかりますよね
なるほど!つまり、マネジャーにどんなふうにされたらやる気が出るか、反対にどう言うふうにされると、やる気がなくなるかわかると・・・
その通り!それはものすごくマネジメントの時にも、研修でマネジメントを教える時にも役立つんです!
ああ、そういうことだったのか。
確かに、営業でもマーケティングでもそうですね。
「お客さんの気持ちが手に取るようにわかれば、なんでも売れる」と言っても過言ではないでしょう。
私はまさに「孫子の兵法」の「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」であると腑に落ちたのです。
ここで部下は「敵」ではないので、言い換えると「相手を知り、己を知ればマネジメントは危うからず」というわけです。
それはこれまでの経験で
家庭では、自分が子供の頃、父と母が自分にやってくれていたこと
学校では、先生が自分達にやってくれていたこと
部活では、部長などが自分達にやってくれていたこと
会社では、先輩、部長、社長が自分達にやってくれていたこと
をよく思い出してみると
「あんなことは嫌だった」
「あんなことは嬉しかった」
などと思い出されます。
むしろマネジメント側だけに立って、マネジメント研修をすると受講生の方々との間に距離ができてしまうんです。なぜなら、だいたい受講生の方々は新人マネジャーの方ですから、マネジメントされきた側の人ですから。
確かに、そんな方々の前で
「私がマネジメントした時にはこうだった」という話っていかにも上から目線になってしまう。
なるほど!と腑に落ちましたし、私も長らくマネジメントされる側だったのでその経験から語ることはできそうです。
そうですよ。また、マネジメントって本当にスキルですから。誰にでもできるんです。「マネジメント」って日本語で言うと「やりくり」なんです
なるほど!
やりくりって誰でもやっているでしょう。
確かに!お金のやりくり、時間のやりくりって言いますもんね。つまりマネジメントはチーム、人のやりくりであると
そうです。お金とか違うのは人ってお金と違ってとても「変動的」1+1=2にならない世界なんですよ。そこが、物の相手のやりくりと大きく違うところなんです!
また、目から鱗である。
そうか、やりくりか・・・・
最高のマネジメントをしているのは、やりくりママです!家庭でお母さんというのは、子供たちをうまく動かして、お父さんも動かして、同時に時間やお金もやりくりしている。
なるほど、限られた人、もの、お金、時間といった資源をどうやりくりするか・・・。
それは誰でもやっていることだ・・・。
と言うことで、東谷さんとの会話は
いやー、今日はマネジメントについて開眼しましたー
と言って終わリました。
誰でも身につけられるマネジメントスキル
ということで、
「人のやりくり」としてのマネジメントスキルについて、改めて考えていこうと思います。
ポイントは5つ。
1 目標を決定、周知する
2 優先順位をつける
3 適材適所で采配を振るう
4 チームのモチベーションを高める
5 正確な指示を出す
です。1つずつみていきましょう。
1 目標を決定、周知する
まずは1 目標を決定、周知する です。
先に述べたようにマネジメントは「やりくり」です。
やりくりには必ず目指すべき目標があります。というより、目標を達成するためにやりくりが必要になります。
お金のやりくりは「◯円貯める」ためにとか「これだけの予算内で」と言った目標があります。
時間のやりくりも1日24時間で物事を回さなければなりません。
また、○日まで、◯時までといった締切も目標となります。
マネジメントも全く同じですね。
そして、チームの目標を立てるためには、その組織の歴史をある程度知っていることが必要になると思います。
つまりその組織で仕事をしてきた経験があること(特に何年以上とかいう目安はないのですが)ある程度その仕事や組織のことを知らないと、なかなか何を目標にするべきなのかを思いつきにくいでしょう。
これは私の起業経験からいえます。
私も起業した当初から
「理念は?」「事業目標は?」と経営者、起業家同士で話題にすることが多く、経営理念を討論したりするコミュニティに入っていたので、考えさせられることが多かったのです。
しかし・・・・
私はイマイチ、理念とか目標と問われても本当に心からそう思える、ぜひ達成したい!と感じられるような理念や目標がありませんでした。
そして、なんとか作ってはみたものの自分自身が「なんか絵に描いた餅だなー」と眺めていました。
そのような感じで、あまり明確な理念も目標もないまま数年経ちました。
そうすると経験的に自分がどのくらい稼げるか、などということがわかってきて、
実際仕事をしてお客さんに喜んでもらえると実感としてやりがいも感じ、
ちょっと目標とか理念とかが体感として腑に落ちるようになってきました。
また、
「あの人があのくらい稼げるのだから、私だってできるだろう」と目標数字も明確になってきたのです。
(かなりのんきな起業ではありますが)そのような経験を振り返っても、積み重ねたことの上に目標は立てやすいかと思います。
そして、そのような目標であると心から本当に「よし、目標達成してみよう!」という気になれます。心から思えるので「絵に描いた餅」ではなくなります。
ですから、チームとしての目標を立てる場合には、これまでの歩みを振り返り、記録におこし、そこから積み上げで立ててみることをお勧めします。
目標は数値目標にする
そして、この目標はKPIと言って数値の目標を立てることが必要になります。
要するに達成できたか否かが明確にわかる方法、という意味です。
わかりやすいのは売上目標のようなものです。
それ以外にも
開発からリリースまでの期間のKPI
顧客満足度のKPI
間接的コスト削減のKPI
申請処理時間のKPI
なども立てることができます。
そして、目標を立てる際に大切なことは
・やらされ感を感じさせないこと、チームのメンバーに押し付けがましくなく設定することが必要です。
ですから、リーダーはこの目標についてメンバーと考える、あるいは「なぜ」この目標であるのかを説明することが大事になります。
さらに、目標達成するためにはこの目標を忘れさせないことも大事です。
目標未達成の理由として
「立てた目標を忘れてしまうから」というものがあります。
日々の業務に追われ、忙しくしていると忘れがちです。
紙書く、毎日口に出して言うなどしていつもいつも意識しておくことがポイントです。
目標は忘れてしまうもの、と心得てリーダーが何度も何度も繰り返し浸透させましょう。
2 優先順位を決める
ゴールが決まったら、そこにたどり着くまでに何をすべきかが出てくると思います。
これはできるだけ細かく出してみましょう。
そして、そのゴールまでなるべく効率よくたどり着くためには「優先順位」を決めることです。
これを間違えてしまうと、途端にゴールまでの道のりが遠くなることがあります。
ぜひ、何からすべきか、次に何をすべきかを検証して行きましょう。
1 優先順位の決め方
緊急なことと重要なことの2軸で考えます。
第1領域 緊急で重要なこと
意味: 期限が差し迫っており、対応しないと大きな問題が発生するタスクや出来事。
例: プロジェクト最終段階での重大なバグ修正。クライアントからの要望で、明日までに修正が必要な資料の提出。進捗会議で急遽求められたデータ分析結果の準備。
対応方法:
すぐに取り組む。これを最優先に対応し、他のタスクを後回しにする。
第2領域 緊急ではないが重要なこと
意味: 長期的な成果や成長に繋がる活動で、今すぐではなくても対応が必要なタスク。
例: リスクマネジメント計画の策定。チームのスキルを高めるためのトレーニングやワークショップの実施。将来のクライアント提案に備えたテンプレートやプロセスの改善。
対応方法:
計画を立てて定期的に進める。
この領域に多くの時間を使うことで、緊急な事態(第1領域)を減らせる。
第3領域 緊急で重要ではないこと
意味: 今すぐ対応する必要があるように見えて、実際には重要ではないこと。
例: 他部門からの急な依頼(必ずしもプロジェクトに必要でない)。ミーティング出席要請(議題が自分のプロジェクトに直接関係ない場合)。クライアントからの細かい質問への対応(即答が不要な場合)。
対応方法:
可能なら他の人に任せる。
自分にとって重要でない場合は、断ることも検討する。
第4領域 緊急ではなく重要でもないこと
意味: 時間を浪費するだけで価値を生まない活動。
例: チャットツールでの雑談に長時間費やすこと。プロジェクトに関係のない無駄な調査や情報収集。必要以上に時間をかけたフォーマットのデザイン修正。
対応方法:
極力やめる。
時間の使い方を見直し、他の領域に時間を振り分ける。
また、それぞれの領域内で複数タスクがある場合には、下記の方法を参考に優先順位を決めていきましょう。
例えば営業でのアポイント取りの営業活動で、やれることに対して「労力」と「費用」に関してどれくらいか費やすのか評価します。その中で最も「労力」と「費用」のかからないことを探します。そして、それから始めていくことをお勧めします。
例えば、このように表にしてみると一目瞭然ですね。
労力 | お金 | |
テレアポをする | ★★★★★ | ★ |
ウェブ広告を打つ | ★ | ★★★★ |
紹介パートナーを探す | ★★★ | ★ |
ブログ記事を書く | ★★★★★ | ★ |
リストを集めてメルマガを出す | ★★ | ★★ |
このように、タスクを整理してみると優先順位が決めやすくなります。
そして、この優先順位を決めていくことが「やりくり」上手になるか否かのポイントにもなりますので、見える化し整理できることがマネジメントの肝になります。
3 メンバーを采配する
モチベーションの源泉は、小さな達成感です。
ですから、小さな達成感を実感できるような機会を持つことが大事です。
例としては
・チェックリストのチェック
・プロジェクトの進捗報告
・プロジェクトを小さなステップに分け、進捗を報告すること
・チームでサポートした相手からお礼を受ける場をつくる
このような日常的にできる小さな達成感の仕組みを作って重ねていくことが、チームのモチベーションアップへの第一歩です。
これもかつて、自分自身がどのようにモチベーションを上げてきたのかを振り返るとわかるかと思います。
そして、特に相手によってもモチベーションの上げ方が違う、ということがあります。
つまり、相手にとって快適でふさわしい関わり方をしてモチベーションを上げていくことが大切です。
そして、これは科学的に基づいた方法で関わっていく方法があります。
それがサーチミー診断です。
これは元々心理学の中の交流分析なのですが、それをコミュニケーションに特化させて新たに独自の方法を編み出しました。
まずはご自分のコミュニケーションスタイルをどのタイプか診断してみてください。
ここではコミュニケーションスタイルを5つのタイプに分けています。
CPタイプ
リーダーシップをとるタイプです。自分の意見を論理的に話すことができます。
そして、実行力もあります。あるべき論も明確で、それを他人に押し付けてしまうこともあります。
NPタイプ
母性的な優しく、共感性が高いタイプです。(男性にもいます)相手の気持ちをおもんばかり人間関係を築いていきます。相手の気持ちを考えて行動するのが遅くなることもあります。
Aタイプ
冷静で、知性的なタイプです。分析することが得意で、その分析結果をもとに根拠を示して意見を言います。客観的な意見を述べるのは得意ですが、反面感情的なことを理解し共感するのが苦手なところがあります。
FCタイプ
明るく社交的なタイプです。みんなから注目されることが好きで、そんな場面には張り切り本領を発揮します。ひらめきに優れて、アイディを出すのが得意です。
ACタイプ
協調性があり、人当たりの良いタイプです。控えめな態度で人と接し、不快にさせたり、怒らせたりすることがあまりありません。一方で優柔不断な面もあり、なかなか決断できなことがあります。
上記のそれぞれのタイプをメンバーで言うとどれに当たるか、考えてみてください。
ヒントになるのは「表情」「話し方」「態度」「仕事への取り組み方」などです。
一番良いのは上記にある診断テストサーチミーをしてもうことです。
もし、できるようでしたら、やってもらってみてください。
各タイプのモチベーションの上げ方
そして、モチベーションの上げ方もそれぞれです。
実は同じ言い方をしても、各タイプに同じように響くわけではありません。
それぞれに響くアプローチの方法があるのです。
では、
簡単にそれぞれのタイプのモチベーションを上げ方のポイントを紹介しましょう。
4 チームのモチベーションを上げる
それぞれのタイプでモチベーションを上げるコツとそのための言葉を紹介します。
CPタイプ
モチベーションを上げるコツ:
リーダーシップ、あるべき論を発揮してもらう。能力を認める。
モチベーションを上げる言葉:
「〇〇さんどう思いますか?」「〇〇さんの能力に期待しているよ」
NPタイプ
モチベーションを上げるコツ:
優しいさ、思いやりを発揮してもらう。
モチベーションを上げる言葉:
「〇〇さんのことみんな信頼している」「すごく困っているんです。助けてもらえませんか」
Aタイプ
モチベーションを上げるコツ:
冷静さ、分析力を発揮してもらう。
モチベーションを上げる言葉:
「このことについて客観的な意見を教えてくれますか」「数字的根拠を示してもらえますか」
FCタイプ
モチベーションを上げるコツ:
ノリの良さ、明るさを発揮してもらう。みんなから注目されていることを伝える
モチベーションを上げる言葉:
「皆の注目の的ですね」「〇〇さんは、この部署のスターだから、ぜひ実力を発揮してほしい」
ACタイプ
モチベーションを上げるコツ: 協調性、穏やかさを発揮してもらう。
モチベーションを上げる言葉:
「皆がやっているので、やってみませんか」「皆たいていそれを選ぶのでこれにしませんか」
ヒントは自分がかけられた言葉を思い出す
自分自身を振り返っても、上司や先輩からどのような言葉をかけられたかは覚えているものではないでしょうか。
自分の心に響いたこと、響かなかったこと。
また、「どうしてあの時あんな酷いことをいう必要があったのか」と思ってしまうようなことも覚えているかと思います。
それらの記憶はマネジメントに大いに役立つでしょう。
部下はどのようなタイプかを知って、モチベーションアップになるような接し方や声の掛け方をしてみましょう。
5 正確に指示を伝える
マネジメントにおいて、明快で正確な指示を伝えることはとても重要です。
チームにおけるコミュニケーションミスにおけるロスは時には致命的なことになりかねません。
特に、リーダーは指示を出すことが仕事でもありますので正確なコミュニケーションは必須です。
その際に、重要になってくるのが「わかりやすく伝えること」です。
では、そもそも、「わかりやすい伝え方」の反対の「不明瞭で、わかりづらい伝え方」になってしまうのは、なぜでしょうか。
その原因は、伝えたいことを整理できておらず、それらをごちゃごちゃのまま話してしまうからです。
この原因は明らかです。ですから、ぜひまずは頭の中で(できれば紙にメモをして)あらかじめ伝えたい内容を整理しておきましょう。
そして、その整理されたものをその話のポイントを正確に伝えます。
これだけで、話はかなりわかりやすくなります。
そして、情報の齟齬(そご)なく部下やチームメンバーに伝わります。
この円滑なコミュニケーションにより、円滑なマネジメントが可能になるのです。
この他、マネジメントで必要になる「わかりやすい話のテクニック」としては以下のようなものがあります。
これらのわかりやすい話し方、正確な伝え方に関しては、「ロジカル・コミュニケーションのテクニック」がお勧めです。
詳細はこちらにありますので、ぜひご参照ください。
ビジネスで必須スキル!ロジカルコミュニケーション®とは何か?
目からウロコのマネジメント術まとめ
・目標を決定、周知する
目標は数値化する
チーム目標はチームの歴史を知っておくことが大事
・優先順位をつける
優先順位の付け方 「緊急で重要」「緊急で重要ではない」「緊急ではなく重要」
「緊急ではなく重要でもない」に整理し、順番を決める
・適材適所で采配を振るう
コミュニケーションのタイプを知って、強みを活かす(相手も自分も)
・チームのモチベーションを高める
相手に相応しいアプローチで相手を動かす
・正確な指示を出す
ロジカル・コミュニケーションのテクニックで伝える
以上のようにマネジメントは、「人・モノ・時間・お金」のやりくりであり、そのスキルは誰でも身につけることができます。
それは誰でもマネジメントを受けたことがあるから。
その経験を活かすことが良いマネジメントのコツになります。
ですから、ぜひこの「やりくり」を鍛錬し、やりくり上手になった暁にはきっと「辛い管理職」から「やりがい管理職」に変化していることであると思います。