新入社員が定着する職場とは:チェック診断&事例5選
新入社員にとって理想と現実のギャップは、離職の主要な要因となることがあります。
新入社員の多くは入社前には会社や仕事に理想を持っています。
そして、自身のスキルを発揮し成長できると期待しています。
ところが、いざ現場に出ると、その理想とは違う現実が待ち受けている場合が通常でしょう。それは仕方のないことです。
ただし新入社員の方々はその理想と現実のギャップは初めての体験であり、それは社会人経験者と一番違うところです。
誰もが初めての経験はとてもインパクトが強く、特にそれがネガティブな印象の場合にはどうしても印象に残ってしまいます。
その結果「もう、だめかも・・・」と考え離職しやすいのです。
そこで、新入社員の理想と現実のギャップを埋めるべく、職場でどのような工夫をしたらいいのかを成功事例を交えながらご紹介します。
また、新入社員にとって定着しやすい職場か否かを診断するためのチェック診断もあります。
これらの知識を知れば、ご自分の会社で新入社員の定着のための具体的に何をすればよいのか、がわかり、初めの一歩が踏み出せると思います。
仕事の内容のギャップを防ぐためのチェック!あなたの職場はどうでしょうか?
就職みらい研究所「就職白書2020」によると「新入社員が離職する理由ランキング」では以下のようになっています。
1位 仕事内容への不満 43%
2位 人間関係への不満 34.2%
3位 労働条件や勤務地への不満 29.8%
4位 賃金への不満 20.2%
5位 会社への将来や雇用安定への不安 14.9%
そこで
・仕事内容におけるギャップ
・スキルにおけるギャップ
・労働条件・環境におけるギャップ
の現状をチェックするための診断を作成しました。
お試しください。
仕事内容におけるギャップ
1 求人情報について正確に詳細を伝えているか
✔︎求人情報において、業務内容や求められるスキルについて具体的に挙げているか。
✔︎日常業務の具体的な例などをイメージしやすい、あるいは数値化するなど詳細に記載できているか。
2 業務内容を正確に伝えているか
✔︎新入社員が配属される前に、実際に行う業務内容を詳細に説明し、1日の業務の流れなどイメージとのギャップがないようにできているか。
✔︎この際、イメージしやすくするために、実際の現場の先輩の話、あるいは写真や動画などを使って示しているか
3 入社後の業務マニュアル提供
✔︎新入社員に対して、業務マニュアルや手順書を渡しているか
✔︎マニュアルについて、説明をし具体的な業務内容や手順を理解させているか
4 オリエンテーションや研修
✔︎新入社員向けのオリエンテーションや研修があり、業務に必要な知識やスキルを十分に習得させることができているか。
✔︎新社会人として必要なマナー、コミュニケーション、常識などを学ぶ機会(研修など)があるか
5 メンター制度の導入
✔︎新入社員が不安や疑問を抱いた時に相談できるメンターを配置し、サポート体制を整えることができているか。
6 業務内容の見直しと調整
✔︎新入社員のフィードバックを基に、業務内容や割り当てを適宜見直し、必要に応じて調整できているか。
✔︎1on1ミーティングなど定期的に新入社員の業務内容に対する不満や問題点をヒアリングできているか。
✔︎1on1ミーティングなど定期的に新入社員の業務の振り返り、キャリアについて考える機会があるか
スキルにおけるギャップ
新入社員と職場のミスマッチの中には
「自分がイメージしていたものとは違った」
「自分の理想があったが、スキルが足りず思ったようにできなかった」
「自分が身につけたいスキルがあるが、それはどうやって身につけたらいいのかわからない」
そんな状況から、もっと違うことや違う職場がいいのではないかと感じて退職。
ということもあるかと思います。
ですから、スキルのギャップを感じないようにするための施策としては大きく2つ
1 ビジネスに必要なスキルを身につける機会を用意する
2 メンター制度や1on1ミーティングなどを通して、キャリアの方向性を見つけどんなスキルを伸ばし、見つかたらよいか考える機会を用意する
ということです。
人は自分の能力を生かしていることを実感できると、当然「やりがい」を感じます。
そして、やりがいを感じられれば長くその仕事を続けたいと思うでしょう。
そんな自分のスキルを活かせる職場にしていくことが必要でしょう。
スキルギャップのチェック項目
1.スキルギャップの評価と特定
✔︎定期的に現状のスキルのレベルをフィードバックする機会があるか(1on1ミーティングやスキルチェック、テストなど)
2. 実務経験の機会
✔︎小規模なプロジェクトやタスクを割り当て、定期的に進捗を確認しながら実務経験を積ませているか
3. 成長目標の設定
✔︎定期的に上司とキャリア面談を行い、具体的な成長目標とアクションプランを設定しているか。
4. 自己学習の推奨とサポート
✔︎自己学習の機会や経済的、時間的なサポートをしているか
上記のような内容で、ぜひスキルチェックをしてみてください。
入社1年目でつけておきたかったスキルとは?
「新入社員が1年目で足りないと感じたスキル」についてのアンケート調査があります。
https://globis.co.jp/news/elearning/10191-2024-06-19/
株式会社 グロービス調査より
これによると
1位 コミュニケーション
2位 マナー
3位 論理的思考力
だったそうです。
この他、世の中の潮流としてはDX、AIなどのテクノロジーを使うためのスキルも欠かせなくなってくるでしょう。
以上のことから以下のようなトレーニングがおすすめです。
基本的なビジネススキルのトレーニング
・コミュニケーションスキルなどのトレーニング
・チームビルディング トレーニング
・コンピュータやITスキルトレーニング
とりわけ、コミュニケーションスキルは新人だけでなく、管理職などにも必須のスキルです。
ただ、そのカバー範囲が広すぎて「どんなコミュニケーションスキルを学べばいいのだろうか」と迷ううところだと思います。
そこでおすすめなスキルが「ロジカル・コミュニケーション」です。
「わかりやすい話し方」のスキルになります。
このスキルを身につけることで
・報連相がスムーズになる
・魅力的なプレゼンテーションができる
・商談をまとめられる
・会議で明快に意見を伝えられる
などビジネスパーソンに必須のコミュニケーションスキルですので、ぜひおすすめです。
ロジカル・コミュニケーションのブログ記事はこちらから
↓ ↓
ビジネスで必須スキル!ロジカルコミュニケーション®とは何か?
では、次にスキルギャップを無くすために、現状を把握してみましょう。
労働条件・環境におけるギャップ
冒頭のアンケートにもあったように、労働環境を実際に知ってみたら「こんなはずではなかった・・・」
と感じる新入社員も多いようです。
働き方改革により、長時間労働はしないことが世の中の流れになっています。
それは働く上ではよい流れであると思います。
逆に想像していたより、長時間労働となるとやはり離職率は一気に上がります。
長時間労働にならない努力は、どこの会社においても重要でしょう。
企業風土も長時間労働と関わりがあると言えます。
つまり「長時間働くことが美徳」という風土があると、一人だけ争うのはなかなか難しいです。
ですから、企業全体で「長時間労働はよくない」という風土を作る必要があります。
では、下記労働条件や環境のチェックをしてみてください。
1. 給与・手取り額の事前説明
✔︎新入社員に給与明細のサンプルや手取り額のシミュレーション資料などが提供されているか。
✔︎ 給与や手取り額について、入社前説明会やオリエンテーションで具体的な説明が行われているか。
2. 労働時間・残業の実態と管理
✔︎実際の労働時間が記録され、事前に説明された標準的な労働時間と一致しているか。
✔︎労働時間や残業時間の管理が適切に行われ、過度な残業が発生していないか確認されているか。
3. 福利厚生や労働条件
✔︎ 福利厚生や労働条件について詳細に記載された資料が新入社員に配布されているか。
✔︎ 福利厚生や労働条件に関する説明会が開催され、質問や理解を深める時間が設けられているか。
4. 労働条件の定期的な評価とフィードバック
✔︎ 新入社員に対して、労働条件や職場環境の満足度などアンケート調査が定期的に実施されているか。
✔︎アンケート結果や面談のフィードバックに基づき、労働条件の改善策が検討されているか。
以上が労働条件・環境におけるチェック項目になります。
労働条件はいずれも数値化しやすいので、新入社員に示していればギャップは少なくなるでしょう。
しかし、どの会社でもできるにも関わらず、忘れがちです。
ですから、注意が必要です
定着のための施策・成功事例5選
では、実際の新入社員定着のための成功事例を5選をご紹介します。
いずれも生産性本部「平成29年度 人材不足分野における人材確保のための雇用管理改善促進事業」より
1 カネテツデリカフーズ株式会社 食品製造業
従来の新入社員の育成は先輩社員の背中を見て学ぶ方法が主流であった。
しかし、多忙な管理職や先輩社員に遠慮してわからないことがあっても相談しないことが多かった。
そうしたこともあり、3年以内に50%の新入社員が退職していた。
【新入社員指導員制度】
若手社員が新入社員に対してマンツーマンで指導にあたった。
そして、毎月双方で指導計画書を作成、月末に指導員と所属長がフィードバックする。
半年ごとに指導員は所属長と人事総務課にこの結果を報告する、
などの取り組みをした。
【教育研修】
指導報告書にもとづき、例えばコミュニケーションが苦手な社員はコミュニケーション研修を受講した。教育研修は毎月行なった。
【仕事とのミスマッチ対策】
内々定を出した後、必ず内々定者と面談を行い入社の 意思確認やミスマッチの有無を確認した。
【成果】
本制度導入後、入社3年以内の離職率が50%前後から10% 前後へと減少した。
以前は50人採用して 3年で20人程度残るかどうかであったが、ここ数年は6~7人採 用して3年間で1人退職するかどうかである。
2 株式会社アイネット 情報通信
【新入社員研修】
新入社員研修の期間を2ヶ月間から 6ヶ月間に延長した。
新入社員同士の一体感の醸成や能力開発、配属ミスマッチの防止などを主たる目的としている。
【入社2年目以降のフォローアップ研修】
入社2年目から4年目までは、年1回のフォローアップ研修(自己のキャリアの振り返り、今後に向けた目標設定など)を実施している。
【長時間労働対策 】
客先常駐のシステムエンジニアについても、労働時間を厳密に把握している。
法定時間外の労働時間が月30時間を超えた 社員に対しては看護師が訪問して、職場環境や健康状態につい て定期的に面談を実施している。
また、自社開発のシステムエン ジニアについては、時間外労働は事前申告制とした上で、一定の 勤務時間を超過した場合は自動的にアラートが出るシステムを導入している。
【成果】
例年40 ~ 50人程度を採用しているが、入社3年以内の離職は3 ~ 4人程度である。職場環境改善を進めたほか、長時間労働者に対する面談制度を導入にしたことにより、メンタルヘルスを要因とした休職も大幅に減少した。
3 株式会社ホットランド 飲食
【スーパーバイザー制度】
スーパーバイザー制度はあったのものの各人の能力にばらつきがあり、新入社員のフォローができておらず、新入社員が一人で悩みを抱えるケースがあった。
そこで人材要件について具体的な項目を挙げて、基準を明確化し教育体系の整備といった施策を実施することとした。
【長時間労働対策 】
人事配置や採用計画を見直し、無理のないように長時間労働を回避する施策を実施した。
【現状把握のための面談の実施】
新入社員に対する人事部フォロー面接、退職理由把握のための退職面談を実施
【成果】
2016年は17人中5人が入 社1年以内で退職してしまった。
一方、2017(平成29)年度は、人事部長、新入社員教育担当者が配属後に面談・フォローを実施したこともあり、新入社員15人のうち、同年11月現在で退職者 は1人のみである。
また、退職面談を実施したところ、これまで把握できていない要因も明らかになった。
4 株式会社ねぎしフードサービス 飲食
【キャリア教育 100ステップ プログラム】
最初はトレーニーと呼ばれる研修生からスタートする。
その後、後述する「100ステッププログラム」に沿って、チャレンジャー(Ⅰ~Ⅲの3ランクから成る)、リーダー、サブマネージャー、店長へとランクアップしていく。
店長は能力と実績に 応じて3つのランクに分かれており、店舗経営者としてマネジメ ントを行う。
100ステッププログラムは、「フードサービスのプロフェッショ ナルとして持つべき必要スキル」を100 項目にまとめたもので ある。
キッチン、ホール、店舗運営などに必要な心構え、知識、 能力で構成されており、その習熟度合いに応じてランクアップ していく。評価基準等はすべてオープンにしている。
2ヶ月に1度、店長は全 従業員と面談を行い、プ ログラムの各項目の達成 状況を確認している。
コ ミュニケーションを取るこ とで、従業員の意欲向上 や離職防止にも繋がっていると考えている。
【成果】
2016(平成 28)年の従業員総合満足度は約 85%であった。
同じく約 85% の従業員が、「自分の仕事にやりがいを感じる」と回答している。
2010(平成22)年上期には 87.2%であった顧客の総合満足度は、2016(平成 28)年下期 には93.7%と過去最高を更新した。
5 株式会社ラヴィアンローズ エステ
【シスター制度】
新入社員1人に先輩社員(基本的に入社年次の若い社員) 1人が「シスター(先輩社員)」として張り付き、配属後 6カ月 公私にわたりフォローを行う教育制度である。
【定期面談制度】
店長と月1回面談を行うことに加えて、役員と年2回面談を 行う制度である。
今後の夢や目標を設定したり、職場における 悩みについて、随時フォローを行う。
【成果】
2014(平成 26)年には30%を超えていた入社1年以内の離 職率は、2016(平成 26)年に24.2%、2017(平成 27)年には 16.2%と改善の方向に向かっている。
社内のコミュニケーショ ンが改善したことで、新入社員も高い意識で研修に臨んでおり 技術力も高まっている。
やはり、いずれのケースも共通点としては
・トレーニングなどのスキル向上のための教育の実施
・1on1ミーティング、人事面談などの新入社員のサポート制度
・労働環境(長時間労働、報酬など)の改善
などが挙げられます。
以上が企業における新入社員定着のための事例5選でした。
新入社員が定着する職場とは:チェック診断&事例5選 まとめ
・仕事におけるギャップ
・スキルにおけるギャップ
・入社1年目で身につけたかったスキルは
1位 コミュニケーション
2位 マナー
3位 論理的思考力
・労働条件・環境ギャップ
・定着のための成功事例5選
いかがでしょうか?
ポイントとしては
現状把握(定着しない理由)→ そのための具体的な対策を立てる → 実行 → 成果
となりますので、すぐにやって成果がでるものではないでしょう。
少なくとも半年から一年間はみておかなければなりません。
しかし、もし実行できたら長期的に大きな成果をもたらすと思います。
ぜひ、まずは第一歩を踏み出すことをおすすめします。